自伝から読む歴史6
大杉 栄
『自叙伝・日本脱出記』
(岩波文庫)
講師:加藤晴康さん
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大杉 栄 林 倭衛/画 |
『自叙伝』は、1916年、大杉が神近市子、伊藤野枝との恋愛関係の中で、葉山の日蔭茶屋で刺される事件の赤裸々な記述で終わっています。それ以後、ロシア革命の勃発により、彼は日本での共産党創設の動きに関与して上海に密航するなどの行動に出ます。そして、次第にポリシェヴイズムと対立する立場を明確にして、無政府主義の国際大会に参加するためパリに渡航します。『日本脱出記』は、このパリで、彼がメーデーに参加して逮捕され国外追放になる記録で、パリ滞在当時から雑誌に連載されていたものです。日本に帰国したのは1923年7月、その2ヵ月後、関東大震災に襲われた東京で、彼は野枝と甥の少年橘宗ーとともに殺害され、「日本脱出記」は未完のまま、遺稿として、未発表原稿を含めて出版されました。
これらの著作は、大杉の人生記録としてはもちろんですが、彼の個性が溢れ出た文学作品として読むことも可能でしょう。しかし、彼の生きた時代は、平民社で幸徳秋水らが反戦の論陣を張る日露戦争のさなかから、大逆事件をへて、第一次世界大戦とロシア革命によって、世界が大きく変化する動乱期でした。その時代を身をもって体現した大杉栄の著作を通じて、彼の生涯を振り返りつつ、その時代の日本と世界の変動の様相を、考えていくことができれば、と思っています。
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会場 シビル3階 (JR中央線立川駅南口徒歩3分 モノレール立川南駅徒歩1分) 地図参照
定員 25名 早めにお申し込みください。
受講料 1回 1000円 会員・学生・経済的困窮者1回 800円(全回前納者は 3500円・会員 3000円)
お問合せ/お申込み シビル1階事務室(平日13〜19時 メール申し込みも可)
Tal:042-524-9014 Fax:042-595-9431 Mail:civiltachikawa@yahoo.co.jp
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郵便局にある振替用紙に、どの回を申し込むか、氏名・住所・電話・メールアドレス等を明記してください。
講師プロフィール:加藤 晴康(かとう・はるやす)さん
東京大学大学院で西洋史を専攻。フランス社会思想、社会運動、植民地関係史を主に研究。横浜市立大学名誉教授。『ブランキ革命論集』(現代思潮社/訳編)、『歴史として、記憶として―「社会運動史」1970−1985』(共著)などがある。シビル市民講座「自伝から読む歴史1〜6」をずっと担当している。
一般社団法人 市民の学習・活動・交流センター
シビル
tel
042-524-9014 fax
042-595-9431 立川市柴崎町3-10-4
【各回の概要】
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大逆事件で獄中の古河力作宛 |
第1回 2018年12月1日(土) 18〜21時
「自由」への目覚めと平民社
軍人の子に生まれ、陸軍幼年学校でエリートの道を歩みはじめるが、喧嘩で重傷を負い退校処分となる。その後、キリスト教の洗礼を受けるも、日露戦争前夜、平民社に参加、幸徳秋水らを知る。そして戦後、赤旗事件で獄中にあり、大逆事件に直面する。
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1923年7月、家族と共に |
第2回 2018年12月22日(土) 18〜21時
『近代恩恵』の時代・伊藤野枝
大逆事件の後の時代、雑誌『近代思想』を刊行。第一次大戦の勃発により、『平民新聞』(月刊)を刊行し、戦争を批判する。大戦のさなか葉山事件が起こる。伊藤野枝は『青鞜』誌上で、平塚らいてうや青山(山川)菊栄らとの婦人解放を巡る論争の当事者になっていた。
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幸徳秋水帰国記念 中央 幸徳、その後 大杉栄、前列右端 堺利彦 (1906年) |
第3回 2019年1月12日(土)
18〜21時
ロシア革命と日本脱出
ロシア革命の後、ソヴィエト政権を支持する日本社会主義同盟発起人となる。大杉は上海に密航し、コミンテルンの代表や中国、朝鮮の革命家とも接触する。しかしまもなくアナ・ボル論争の渦中の人となり、パリに渡航する。
第4回 2019年2月2日(土) 18〜21時
パリ追放、関東大震災
上海行きののち、パリに渡航し、労働運動などに接し、また場末の生活に触れた経験は、『日本脱出記』の主題になっている。しかし現地から追放となり、帰国した日本でまもなく起こった運命の大震災。彼の死は、日本にとっても一つの時代の転換を示すものとなった。
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(左から) 山川 均 堺 利彦 荒畑寒村 大杉 栄 |