ロシア革命100年(2)
未来からの透視
─ロシア革命百年
講師:太田昌国さん
1917年に起きたロシア革命から100年が過ぎた。
ロシア革命の延長線上で生まれたソ連邦が1991年に崩壊してから4半世紀以上が過ぎた。「社会主義」=ソ連が存在していた時代を経験していない世代が、数年後には30歳をむかえる。
社会主義体制がほぼ解体し、「資本主義が勝利した」この25年有余の間に、社会の在り方はずいぶんと変わった。資本主義の推進者たちは、世の中が自分たちの思いどおりになると思っているようだ。雇用側の利益を優先し、働く者の権利や条件はどうでもよいとする新たな法規が次々とつくられようとしている。縁故主義に基づいた「政治」が横行し、辛うじて保たれていた論理も倫理も打ち捨てられてしまった。こんな状況がなかなか変わらない。
だが、ここのきて、変化の兆しもあると感じる。「革命」や「社会主義」を実体験として知らず、「知識」としても持たない若い世代の人びとの中に、それへの関心が高まっている。体験も知識も備えた世代にも、それが掲げた理想主義がなぜうまく実現できなかったのかと内省する動機が、心中深く渦巻いている。
いまこそ、ロシア革命に始まって一世紀にわたる社会革命の実像から、その「功罪」を考えるべき時だ。だが、それは一個人の手に負える作業ではない。話を聞き、討議し、協働する場を創り出そう。(講師プロフィールはこちら→)
会場 柴中会公会堂 (JR中央線立川駅南口徒歩3分 モノレール立川南駅徒歩1分) 地図参照
受講料 1回 1000円 会員は1回 800円、学生は1回 500円
(全回前納者 一般 5000円、会員 4000円、学生 2500円)
お問合せ/お申込み シビル1階事務室(平日13〜19時 メール申し込みも可)
Tal:042-524-9014 Fax:042-595-9431 Mail:civiltachikawa@yahoo.co.jp
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郵便局にある振替用紙に、どの回を申し込むか、氏名・住所・電話・メールアドレス等を明記してください。
講師プロフィール:太田 昌国(おおた・まさくに)さん
若き日、19世紀文学の豊かさと20世紀初頭の社会主義革命─それを生み出したロシアへの関心止みがたく〈ロシア学〉を志すも、途中で主要な関心が変わり、挫折。20代前半、それでも『レーニン全集』編集のために某出版社に就職内定するも、或る理由から取り消され、これも挫折。ふたつの挫折体験を乗り越えて、半世紀ぶりに「ロシア/ソ連」の重層的な歴史の経験を共に据え返す機会にしたい。仕事は編集者/民族問題研究。著書に、『鏡としての異境』『千の日と夜の記憶』『チェ・ゲバラ プレイバック』『「拉致」異論』『〔極私的〕60年代追憶』、共著『拉致対論』(蓮池透氏と)、編著に『アンデスで先住民の映画を撮る』など。
一般社団法人 市民の学習・活動・交流センター
シビル
tel
042-524-9014 fax
042-595-9431 立川市柴崎町3-10-4
【各回の概要】
第1回 2018年6月24日(日) 14〜17時
興奮と希望、幻滅と絶望のロシア革命100年史
既成の秩序を変革する革命は、旧い社会で特権を貪っていた者以外からは、いつだって、善意に解釈される。100年前のロシア革命も、世界中で興奮と希望を生み出した。だが、やがて、そこからは、幻滅と絶望の呻き声が洩れ聞こえ始めた。それは、どういうことだったのか。なぜだったのか。ナロードニキ(人民主義者)たちの活動が始まった帝政下19世紀以降の革命に向けてのたゆまぬ歩みをたどり、同時に、1991年の体制崩壊に向かう経緯も簡潔にスケッチして、全6回の入門編とする。
第2回 7月22日(日) 14〜17時
全55巻の全集からはみ出たレーニン
当時の日本の新聞がレーニンを「冷忍」と書き表すなかにあって、芥川龍之介は彼を、「僕等の東洋が生んだ、草花の匂のする電気機関車だ」と謳った。そのレーニンの著作は、ソ連では1920年のレーニン生誕50周年以降、5度にわたって『レーニン全集』として編集・出版された。だが、91年の体制崩壊以降、党・政府が秘匿してきたレーニン文書が公表されている。公認の全集に未収録の文書で、レーニンは何を語っているのか。それはロシア革命の本質といかなる関係にあるのだろうか。
第3回 9月2日(日) 14〜17時
「アナ・ボル論争」は古くない
17年革命から5,6年しか経っていない1922〜23年にかけて、日本では「アナ・ボル論争」が交わされた。大杉栄がアナーキストを、山川均がボリシェヴィキを代表し、ロシア革命の評価をめぐり論戦がくり広げられた。その後のロシア革命の「末路」を見るにつけても、この論戦がもつ意義は大きい。ボリシェヴィキの権力政治をアナーキズムの観点から批判することは有効なのか。シモーヌ・ヴェイユ、ノーム・チョムスキー、サパティスタにも触れながら、95年前のこの論戦の現代的な復権を試みる。
第4回 9月30日(日) 14〜17時
ソ連時代の文学・芸術の魅力と挫折
社会革命の祝祭的な興奮と、文学・芸術の高揚とは連動する。旧社会の価値観の崩壊とともに、芸術表現は一新される。さまざまな冒険が始まり、アヴァンギャルドな表現がそれを牽引する。ロシア革命直後には、どんな文学、どんな芸術が生まれたか。他方〈党〉を軸に据えた権力構造が固定化されてゆくにつれ、その思想的な枠組みを外れる表現は弾圧された。革命的な表現の〈栄光〉と〈挫折〉の道を、文学・絵画・映画・演劇・音楽などのジャンルを通して、一望する。
第5回 10月28日(日) 14〜17時
粛清・強制収容所・情報封鎖と社会主義
スターリン治世下の強制収容所に24年間閉じ込められた人は「虚偽・不公正・失望・屈辱・厚顔無恥・背信・偽善・極寒・恐怖でべとつく泥まみれの年月だった」と書いた。ソ連社会主義が残した「粛清・強制収容所・情報封鎖」の〈伝統〉を、それ以降続くいかなる社会主義体制も克服できていない。社会主義が、その本質からして人権抑圧を孕んでいるものならば、これほどの背理はないだろう。朝鮮、中国、ベトナム、キューバも例にしながら、この問題が孕む〈絶望的な〉までの奥行きを考える。
第6回 11月24日(土) 14〜17時
日本社会は「社会主義国」といかに向き合ったか
東アジア地域に位置する日本はその近現代史の中で、〈日本海〉の向こう側の複数の社会主義国と向き合うことになった。ソ連、モンゴル、中国、朝鮮である。日本はこれらの国々に対して(国によっては、社会主義化する以前から)干渉戦争、侵略戦争、植民地支配などを仕掛けた。日本社会は、東アジアに成立したこれらの「社会主義国」といかなる関係を築いてきたのか。小説・紀行文・証言・拘留記録などを通して、過去を踏まえた、新しい〈日本海〉周辺地域(=東アジア)地図の描き方を展望する。
★講座参考文献
◆ ジョン・リード『世界をゆるがした10日間』(岩波文庫、光文社古典新訳文庫など)
◆ レーニン『国家と革命』(講談社学芸文庫、岩波文庫など)
◆ ステファヌ・クルトワ他『共産主義黒書(ソ連編)』(ちくま学芸文庫)
◆ 横手慎二『スターリン「非道の独裁者」の実像』(中公新書)
◆ ミハイル・ブルガーコフ『巨匠とマルガリータ』(岩波文庫)