ロシア革命100年(1)
加納実紀代さんと読む アレクシエーヴィチ
『戦争は女の顔をしていない』
ロシア革命からちょうど100年。シビルでは、加納実紀代さんとともに、ベラルーシのジャーナリスト、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの『戦争は女の顔をしていない』を読もう!ということになりました。
ソ連は第二次世界大戦で2600万人以上の死者を出し、その数は敗戦国の比ではありません。今もなお、「戦勝記念日」には華やかな軍事パレードが赤の広場で行われ、戦死した家族の写真を掲げて笑顔で行進の列に参加する人びとがいます。
「大祖国戦争」と呼ばれるこの戦争では、ソ連軍の一員として100万人以上の女性たちが戦線へ向かいました。従軍医師や看護婦としてだけでなく、多くの男性と肩を並べて戦ったことは、知られていました。しかし、帰還した男性兵士らが英雄とされるのに対し、女性たちは、戦場に赴いたがゆえに、戦後白い眼で見られるようになったというのです。退役軍人手当も諦め、過去を隠し続けて生きた女性たち……。
戦争は男のもの、男が語るものという「常識」を打ち破るために、アレクシエーヴィチが長い時間をかけて聞き集めた女性たちの声を記録した本書を、3回にわたってじっくりと読んでいきます。女性たちはなぜ戦場に向かったのか、そこで何を経験したのか、取材に訪れた作家を前に、何を語り、何を語らずにいるのか……。
単なる出来事の記録ではなく、個人の感情の記録を歴史に残そうと努力するアレクシエーヴィチの作品を読み、参加者ひとりひとりが感じたこと、考えたことを語り合いませんか? もう読まれた方も、これから読む方も歓迎。できれば事前に読んでご参加を。
講師 加納 実紀代(かのう・みきよ)さん
プロフィールは下記
会場 柴中会公会堂 (JR中央線立川駅南口徒歩3分 モノレール立川南駅徒歩1分) 地図参照
定員 50人(まだ多少受け付け可能です。)
受講料 1回 1000円、会員・学生1回 800円(全回前納者 一般 2500円、会員・学生 2000円)
お問合せ/お申込み シビル1階事務室(午後1〜7時 メール申し込みも可)
Tal:042-524-9014 Fax:042-595-9431 Mail:civiltachikawa@yahoo.co.jp
●オススメ 郵便振替口座 口座番号「00170-0-481827 シビル運営委員会」
郵便局にある振替用紙に、どの回を申し込むか、氏名・住所・電話・メールアドレス等を明記してください。
講師プロフィール:加納 実紀代(かのう・みきよ)さん
1940年ソウル生まれ。広島で被ばく。京都大学卒業後、1968年まで中央公論社に勤務。1976年〜1996年、「女たちの現在を問う会」会員として、『銃後史ノート』(全10巻、JCA出版)、『銃後史ノート続編』(全8巻、インパクト出版会)を刊行。『新編日本のフェミニズム全12巻』(岩波書店)編集委員。2011年まで敬和学園大学特任教授。2014年ドキュメンタリー映画『何を怖れる フェミニズムを生きた女たち』(松井久子監督)に出演。女性史・ジェンダー史研究者として、女性の視点から戦争、軍隊、暴力を問い続ける。
主要著書 『女たちの〈銃後〉』1987年筑摩書房(増補新版1995年インパクト出版、以下3冊も同社)、『戦後史とジェンダー』2005年、『軍事主義とジェンダー』(敬和学園大学戦争とジェンダー表象研究会編)2008年、『ヒロシマとフクシマのあいだ』2013年。
一般社団法人 市民の学習・活動・交流センター
シビル
tel
042-524-9014 fax
042-595-9431 立川市柴崎町3-10-4
【各回の概要】
第1回 2016年9月24日(日) 午後2時〜5時
社会主義は女性を解放したか?―「社会主義の祖国」と第二次世界大戦
100年前の1917年3月、社会主義者でフェミニストの山川菊栄は、駅のベンチで広げた新聞の大見出し「ロシアに革命おこる!」に感動で身内が震えました。ツアーの圧政崩壊は人民の解放であり、女性の解放でもあるはずだからです。解放を願う世界中の人びとにとって、ソ連は輝かしい「社会主義の祖国」でした。
第二次世界大戦においてソ連では、100万を超える女性がその「社会主義の祖国防衛」に立ち上がり、男性とともに戦いました。しかし戦後、彼女たちは歴史から抹殺されています。著者アレクシエーヴィチはそうした女性を訪ね歩き、硬い胸の扉から溢れ出す言葉に耳を傾け、本書にまとめあげました。そこから浮かび上がるのは?
第1回は、この本の成り立ちや歴史的背景を検討したうえで、戦争への女性動員に力を発揮した雑誌画像も見ながら、社会主義と女性解放について考えたいと思います。
第2回 2017年10月22日(日) 午後2時〜5時
戦争はなぜ女の顔をしていないのか?―戦争がジェンダーを構築した
ハイヒールに憧れ、ダンスに夢中になる。そんな娘たちが何度断られても軍隊の扉を叩き続け、ついに前線への志願を果たす──。中には、戦争の間に背丈が伸びた幼い少女もいました。そこで彼女たちが出会ったものはなんだったでしょうか? 女性の戦闘参加は男女平等のゴールか?
1990年代の日本で、一つの論争がありました。どんなに女性の社会進出が進んでも、軍隊は「男らしさ」の最後の砦であり、とくに戦闘部署への女性参加は禁じられているのが一般的でした。アメリカ最大の女性団体がそれに異を唱え、戦闘部署への女性参加を要求したことから起こったものでした。
本書はその論争への一つの答えと言えるでしょう。戦争は男のものであり、女の顔をしていない。なぜでしょうか? この回では、「男らしさ/女らしさ」といったジェンダーと戦争の関係を検討しつつ、軍隊と男女平等について話し合えたらと願っています。
第3回 2017年11月25日(土) 午後2時〜5時
なにが書かれ、なにが書かれていないか―戦争と性暴力
男が語る戦争には、戦局の推移や英雄の事績があふれています。しかし本書で女が語る戦争には、そんなものはない。その代わり感情があり、痛みがあり、美さえある。それによって戦争は、一層悲惨で非人間的なものとして読者の胸に迫ってきます。
しかし、書かれていないこともあります。性暴力です。恋愛は書かれていますが、性暴力は書かれていないと言っていい。「慰安婦」問題に見られるように、日本軍の性暴力はつとに明らかにされていますが、連合軍によるヨーロッパ戦線での性暴力についても研究が進んできました。ドイツ占領下の一般ソ連女性や、男性と共に戦った本書の語り手たちが被害を受けなかったとは考えにくい。なぜ書かれなかったのでしょう?
最後のこの回では、それについて話し合う中で、女性の人権と戦争の関係について改めて考えたと思います。