韓国のいま、私たちの未来
朝鮮半島は中国、台湾、日本とともに東北アジアの一角にあり、私たち日本で暮らす人間にとって分かちがたい地域です。1960年代の李承晩大統領を倒した学生革命、70〜80年代にかけ闘われた光州の民衆蜂起、連動する民主化闘争は、私たちを根底から揺り動かすものでした。90年代、当事者の告発からはじまった日本軍「慰安婦」問題は、歴史的な責任の問題を私たちに提起しました。2015年12月、日韓両政府は姑息な日韓“合意”に至りました。しかし、いま韓国全土で起こっている朴槿恵大統領退陣を求める運動の大きなうねりの背景には、確実にこの問題が存在します。さらに、東北アジア全体を覆う戦争と平和、経済と人権をめぐる多面的な問題が横たわっていると思います。
講座準備のスタッフは、会議と講師依頼のための面会を重ねてきました。2009年の慮武鉉大統領の自死以後の韓国、現在の韓国で暮らす人びと、在日コリアンの人びとをめぐる状況に焦点をあてつつ、歴史と現在、そして課題を考える場になることを願っています。ホットなテーマ、話題豊富、現実にむきあう問題提起を楽しみにお集まりください。
会場 シビル 3階(地図参照 JR中央線立川駅南口徒歩3分 モノレール立川南駅徒歩1分)
定員 60人 早めにお申し込みください。(受講者の人数により会場が変更されることがあります)
受講料 1回 1000円、会員・学生は1回800円(全回前納者は5000円、会員・学生は4000円)
お問い合わせ/お申込み シビル1階事務室(平日13:00〜19:00 メール申し込みも可)
Tal:042-524-9014 Fax:042-595-9431 Mail:civiltachikawa@yahoo.co.jp
●オススメ 郵便振替口座 口座番号「00170-0-481827 シビル運営委員会」
郵便局にある振替用紙に、どの回を申し込むか、氏名・住所・電話・メールアドレス等を明記してください。
【各回の概要と講師プロフィール】
第1回 2月26日(日)14〜17時 講師:山下 英愛さん
韓流ドラマに見る現代韓国─女性たちの生き様(よう)とその変遷
①韓国の現代史をドラマでたどり、②とりわけ女性たちがその苦悩や葛藤をどのように乗り越えてきたのか、について紹介する予定。
〔プロフィール〕 日本人と韓国人との間に生まれる。1988年、韓国に留学し、梨花女子大学で女性学を学ぶ。ちょうどそのころ起こった日本軍「慰安婦」問題解決運動に参加。2000年に日本に戻る。韓国での体験をつづった『ナショナリズムの狭間から─「慰安婦」問題へのもう一つの視座』(明石書店2008)を出版。その後は、韓国ドラマを素材にして韓国の文化や社会について論じ、『女たちの韓流〜韓国ドラマを読み解く』(岩波書店2013)にまとめる。現在、文教大学教授。
第2回 3月26日(日)14〜17時 講師:藤井幸之助さん
猪飼野セッパラム文庫をなぜつくったのか?─在日朝鮮人の歴史と文化を学び伝える
大阪「猪飼野(いかいの)は渡来人も多く、戦前戦後、東成区・生野区にまたがった地域の地名で、在日朝鮮人の集住地域として知られた。しかし、1973年に町名変更で、地名としてはなくなった。1980年代、この付近には「猪飼野朝鮮図書資料室」「学林図書室」「青丘文化ホール」「カラ文化情報センター」など、朝鮮韓国在日に関する専門図書館があったが、今はない。そこで「猪飼野」に隣接した天王寺細工谷で、「猪飼野セッパラム文庫」(セッパラムとは朝鮮語で“東風”の意。“新しい風”の意味も)を2015年5月に開館した。誰もが利用できる、みんなのまちの人権図書館を作っていきたい。
〔プロフィール〕 大阪外国語大学朝鮮語学科卒業。同志社大学嘱託講師。
第3回 4月23日(日)14〜17時 講師:梁 澄子さん
日本軍「慰安婦」問題の解決とはなにか?─運動の歴史とこれから
2015年12月28日の日韓合意は、日本政府が韓国政府との間でだけ合意することをもって日本軍「慰安婦」問題の「解決」とし、日本ではメディアも協力して、「これで解決」を実現しようとしている。戦時性暴力被害者の被害回復に関する国際基準づくりの契機ともなった問題が、その国際基準に全く見合わない形で「解決」とされたことに、韓国では「正義の解決」を求める声が高まっている。韓国の、そして世界の日本軍「慰安婦」問題解決運動の中心にあり続けた韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)の30年に及ぶ歴史と歩みを振り返りつつ、彼女たちが求める解決とは何かを考える。
〔プロフィール〕 日本軍「慰安婦」問題解決全国行動共同代表。一橋大学講師。
第4回 5月28日(日)14〜17時 講師:岡本 有佳さん
日韓の間で考える“表現の不自由”─検閲、規制、自粛と抵抗のアート
ニコンサロン「慰安婦」写真展中止事件裁判を支援する仲間たちと2015年に開催した「表現の不自由展」の経験から、検閲、規制、自粛と抵抗のアートについて考える。朴槿恵大統領退陣を求める抗議の表現や少女像の深化など、現場レポートも交えて。
〔プロフィール〕 編集者。文化企画。風工房主宰。Fight for Justice「慰安婦」問題Webサイト運営委員。表現の不自由展共同代表。東アジアのYASUKUNISM展共同代表。ドキュメンタリー映画『60万回のトライ』共同プロデューサー。共著に、『Q&A朝鮮人「慰安婦」と植民地支配責任〜あなたの疑問に答えます』、編著『増補改訂版〈平和の少女像〉、なぜ座り続けているのか』、『東アジアのヤスクニズム─洪成潭〈靖国の迷妄〉』など。
第5回 6月25日(日)14〜17時 講師:太田 昌国さん
15年後の「拉致異論」─私たちに何が欠けていたのか
世界的に〈排外〉と〈不寛容〉という妖怪が徘徊し始めている。だが、それを他人事のように言うことはできない。それは、世界のどこより早く、この日本社会に立ち現われた妖怪だからだ。支配層のみならず広く社会全体に行き渡っているこの現象は、いつ始まったのか、なぜ、私たちは、これが蔓延するのを阻止できないでいるのか。「国」と「民族」を拠り所に、ひたすら〈排外〉に走る社会現象の起源を2002年の日韓首脳会談直後に捉えて、それ以降の15年の歳月の中で、私たちに欠けていたものは何かを考えたい。
〔プロフィール〕 編集者+民族問題研究者。著書に『〈脱・国家〉状況論』、『「拉致」異論』、『日本ナショナリズム解体新書』、『極私的60年代追想』、『暴力批判論』など。
第6回 7月23日(日)14〜17時 講師:李 泳采さん
87年6月民衆抗争以降30年、韓国社会の変革と日本の役割
2017年は、87年6月民衆抗争以降30年を迎える年である。民主化以降30年、韓国の市民社会は今、何を目指しているだろうか。「市民革命」とも呼ばれていた朴槿恵政権退陣キャンドルデモの意味から、今後の行方を展望する。
〔プロフィール〕 韓国生まれ。恵泉女学園大学教員。専門は日韓・日朝関係。日韓の市民団体の交流コーディネーターを務める。「ヤスクニの闇に平和の灯を!東アジア4地域(日本・韓国・台湾・沖縄)キャンドル行動実行委」事務局。著書に『韓流がつたえる現代韓国』、『アイリスでわかる朝鮮半島の危機』、『なるほど!これが韓国か─名言・流行語・造語で知る現代史』、『犠牲の死を問う』、『アングリーヤングボーターズ 韓国 若者たちの戦略的選択』などがある。